戦時型スイッチバックの残る仁山駅 (平成17年2月12日撮影) (平成18年3月25日掲載)

「戦時型」・・・昭和10年代後半に発生し、昭和20〜30年代に消滅してすでに死語となって久しいはずのものが、平成2ケタの現代に残っているとは・・・。
I love Switch Backというサイトで、仁山駅の特殊なスイッチバックの存在を知り、しかも最近まで可動(稼働ではない)であると知り、そして遂に行ってきました。
なお、仁山スイッチバックの詳細については、I love Switch Back の北海道編の「仁山(信)」など、仁山駅関連の各サイトを参照下さい。
※私は、「I love Switch Back」の影響を受けて仁山駅に行きましたが、「I love Switch Back」とは関係なく取った行動であり、ここの掲載に関する文責はすべて「かのぷ〜^^」にあります。

仁山駅と、スイッチバックの現状  
仁山駅駅舎。

国鉄時代は、客扱いを例外的に認めた信号場でしたが、今では正式な駅になっています。
スイッチバック加速線途中から終端方向を見る・・・

・・・雪でよくわからない。
ただ、この除雪状況から、残念ながら、使われていない、ということだけは確かなようだ・・・。
加速線途中から、駅方向を見る。

ホームのように見えるものは、加速線に停車した場合の、乗務員用ホーム(?)です。
雪の中
スーパー北斗号が通過していきました。
仁山駅下り線進入路。(写真奥が函館側)
ポイントは加速線側に開いています。

函館方面から、仁山駅に進入する際は、このポイントを、本線側に開かなくてはなりません。
・・・スイッチバックに関連するポイントは、やはり生きている!!?
仁山駅上り線線路(写真奥が函館側)

このポイントは、安全側線です。
 左の写真を撮影中に、仁山駅函館側の踏切が鳴り始めました。退散しようにも、雪で足を取られ、それでもなんとか上り線路脇まで逃げました。来た貨物列車がゆっくりの走行であったため、カメラ構える余裕ができましたが・・・。
 軌道敷に入っての撮影は、それなりのリスクが伴います。時刻表に列車が載っていなくても、臨時列車や貨物列車の運転、ダイヤの乱れ等によって、列車が来ることがあります。
 本来、許可無く軌道敷内に立ち入ることは禁止されています。私もやってしまった以上、大きな事は言えませんが、軌道敷内への立ち入りは最小限にとどめ、(個人的な興味を含めた)撮影,調査などで、どうしても立ち入る場合は、周囲の状況に最大限注意し、最悪、予想外の列車が来てもすぐ避難できるよう態勢で、自己責任で行ってください。取り返しのつかないことが起こっても、私は責任を負えません。
雪煙を上げて走る、貨物列車

このディーゼル機関車「DF200型」は、函館−札幌を走るためにつくられたもので、北海道でしか見ることができません。
貨物列車が行ったあとで、もう1度加速線側を撮影。

わかりにくいですが、下り線ポイント分岐先(加速線)は平坦で、本線は下り勾配になっています。
再び加速線途中から、駅方向を見る。

人が歩いたような跡があります。
JR北海道係員の巡回跡と思います。たぶん。
加速線途中から、分岐辺りを拡大。

白地に黒帯が入った標柱は、車両接触限界標識※1(積雪地用)で、手前のものは、まさに加速線の分岐のためにあります。(奥の汚れているものは、仁山駅上り下り分岐のものです)
下り(函館行き)普通列車。
仁山駅ホームの駅名標 待合室にあった、注意書き。

駅建物内にあった、構内略図。
「加速線退行時の仁山踏切注意」の文字が・・・。

窓の外から撮ったため、非常に見づらいですが・・・。 このほかにも、信号に関する設備があったような気がします。
信号場であった過去から考えて、この付近の信号に関する設備が有るのは、当然と思われます。
半分雪に埋もれた、顕彰碑。
 

 「戦時型スイッチバック」というのは、第2次世界大戦中に、勾配区間の輸送力(特に貨物)を増強するために作られたスイッチバックです。通常のスイッチバックは突っ込み線と加速線を有し、本線とエックス型になっているのに対し、登坂のための加速線だけが枝のように出ています。

 戦時型スイッチバックは、戦争が終わるとともに不要となったところもありますが、仁山信号場(当時)は、行き違い型信号場でかつ客扱いを行っていたため、急勾配途中でありながら列車を停車させる必要があり、大沼方面に向かう列車を発車させる際、坂道発進となるため、戦争終了後も加速線が活用されていたようです。しかし、その後、勾配緩和線である通称「藤城線」が開通したことで、下り(大沼方面)優等列車,貨物列車、そして一部の普通列車はそちらを経由することになり、加速線の活用が激減しました。それでも客車普通列車が停車した際には、使用があったようです。(I love Switch Backに、昭和50年代に客車列車が加速線に入っている写真が掲載されています。また、同ホームページによると、仁山信号場は、開設当初は一般型スイッチバックであったそうです。)

 この駅の訪問を、敢えて真冬に行ったのか・・・?
  ・ 雪の積もった状況から、スイッチバックの使用状況が確認できる
  ・ 降雪時、スリップ対策で加速線を使用するのでは。という甘い期待。
結局は、写真で見るとおり、線路は雪に埋もれており、使用されている形跡はありませんでした。しかし、放置状態であると考えると、積もっている雪の量が少ないように思います。 まさか、除雪車が入ってたりとか・・・。


スイッチバック関連の動作報告  
川をまたぐ路盤。

奥が本線で、雪に埋もれつつも、手前にも路盤があることが確認できます。
加速線終端方向を撮影。

雪が上がっても、
雪に埋もれていて、詳細は解らず・・・。
三たび、加速線途中から、駅方向を見る。

何事もないように見える。
スイッチバック加速線に関するポイント。

本線側に開いています。
下り(大沼方面)列車が来ました。 仁山駅に停車した普通列車。
下り列車が仁山駅に停車して、
ポイントは、加速線側に替わりました!!!

列車が加速線に入れる状態です。
加速線沿いの乗務員用ホーム。

この段階では、まだ、ただの物体写真です。
でも、このあと・・・
上り(函館方面)の特急列車が来ました。

もちろん、仁山駅は通過です。
雪煙を上げて走る、特急列車。
加速線沿いの、
乗務員用ホームの、
レピータ※2が、点灯している!!!

右に写っているのは、通過の上り特急列車です。
特急列車の通過後。

車が通っていることから、仁山駅横の踏切が上がっていることが判ります。
上り普通列車の発車後。

レピータは消灯しました。
 


 仁山スイッチバックについて、上にあるように、通常、列車が加速線を利用することは無いようです。上記写真の約6時間前に、仁山を経由する下り列車に乗車しましたが、やはり、加速線の使用はありませんでした。

 しかし、ポイントおよびレピータは、列車が加速線を使用できるように、動作していました。
最近になって、不要な行き違い設備などを撤去したりする動きがある中で、可動状況で残っている(当然、保守もしているだろう)ということは、なんらかの事態を想定しているのかも知れません。
 勝手に仮定するならば、やはり、「藤城線」が工事,事故等で使用不可になったとき、でしょうか。加速線を使用するのは、おそらく機関車牽引列車であろうと考えられるため、貨物列車や寝台特急などが仁山駅で行き違いをする際に使用するのかも知れません。しかし、強力ディーゼル機関車「DF200型」の場合、加速線が無くとも加速できるかも知れません。(ただし、寝台特急などは未だに「DD51型」が使用されています。)
 そのほかには、なんらかの理由で、列車が登坂不能になったとき・・・「I love Switch Back」にもちらっと書いてありますが、JR大糸線で大量のヤスデを踏んづけて、立ち往生したことがあるそうです。(「大糸線」「ヤスデ」で検索をかけると、いくつか引っかかります) 私は、上にも書いたように、「降雪時」を考えましたが、違ったようです。そのほかには、上越線で、落ち葉のため空転ということがあったようです。

 ただ、加速線を使用する際に、疑問として残るのは、踏切の動作です。たとえば、列車が駅停車後、加速線に入ると仮定すると、加速線に入線および出発の際、踏切を通過するため、踏切を閉じる必要があります。しかし、踏切を通り終えるかどうか際どいところ(踏切はまだ下りているはず)で、すでにレピータが点灯している(出発指示がある)にもかかわらず踏切が上がっています。つまり、踏切の動作は、加速線の使用を考慮していないことになります。踏切動作モードを切り替えることが可能なのか、それとも撤去について無言で予告しているのか、現時点では何とも言えません。

※1 車両接触限界標識(積雪地用) : 2つの線路が合流する場所の手前に設置される標識。車両が、合流点に向かっている際、標識より手前であれば、合流する相手の線路の走行を妨げない。通常のものは、白い四角い標識が地面から顔を出している程度であるが、積雪地用は、雪に埋もれてしまわないように標柱の形を取る。

※2 レピータ : ホーム等に設置される出発反応標識。列車出発に関する信号機(通常は場内信号機)が青になったら点灯する。本来は、(列車最後尾にいる)車掌に、出発信号の現示を知らせるもの。仁山スイッチバックのものは、加速線からは見えない出発信号の状況を表示する、中継信号機のような使われ方をしていると思われます。




I love Switch Back

JR北海道函館支社


鉄道写真のページ「北海道・東北編もくじ」に戻る